2014年2月1日

La signora di sotto

下の階のおばあちゃま



我が家の下の階には、90歳を超えたおばあちゃまがお一人で住んでらっしゃる。
普段は、会えば挨拶をする程度のお付き合い。
それでも今までに、二度ほどお話しする機会があった。


一度目は、テーブルクロス上に腕輪を置いたままにしていて
それを知らなかったアンドレアが、食後にベランダに出て
クロスのパン屑をはたいていた際に
その腕輪を、おばあちゃまのお庭に落としてしまった時。


すぐに二人で階下に降りてゆき、事情を話して腕輪を取らせてもらった。
お一人で住んでらっしゃること。ナポリのお生まれだということ。
一度、泥棒に入られたので、それ以来、鎧戸の外側に鉄作も取り付けられたこと。
そんな事をうかがって、ご迷惑を再度謝って、腕輪と一緒に家に帰ってきた。
お庭には、かなりの雪が積もっていたのを覚えている。そんな季節の頃だった。


耳が遠くて聞こえにくくていらっしゃるらしく
普段は、テレビをご覧になるのはかなりの大音量。
お話をされる時も、とても大きな声で話される。
それで、テレビの音がしていたり、話し声が聞こえている時は
あぁ、お家にいらっしゃるんだなと思うようになった。


二度目は、それから半年以上は経った頃。まだ暑さが続いていた時期だった。
お昼ご飯を食べ終えた私は、下からおばあちゃまの声がするのに気がついた。
そう言えば、午前中にも誰かを呼んでらしたような声がしていたなと思いながら窓を開けた。
『aiuto.... Aiuto.....』そんな風に聞こえた。ギョッとした。
Aiuto とは、『助けて、、、』という意味。


まだここに馴染めてなかった頃で、私自身が沢山の不安を抱えていた頃。
自分のイタリア語に凹むことが、今よりもっともっと多かった頃。
だから、聞こえた言葉に自信がなかった。そしてすぐに、その声は静かになった。
やはり聞き間違えたかな?と思って暫くしたら
また『Aiutooooo....aiuto!』とおばあちゃまの声が聞こえてきた。
いくら私でも、今度は聞こえた言葉に確信を持った。
それで、お隣の奥さんに事情を話して一緒に下に様子を見にいった。


助けてと叫び続けるおばあちゃまに扉の外から声をかけ
幸い中から鍵がかかっていなかったので、二人してすぐに中に入って驚いた。
おばあちゃまは、叫びながらソファーの前で倒れていた。
何かの拍子で倒れた後、一人で起き上がれなくて、かなりの間叫び続けていらしたようだ。


幸い怪我もなく、意識もはっきりしてらしたのだが
そのまま、おばあちゃまを一人でおいて行くこともできず
いつもお世話をしているお姉さんが来るのを二人で待つことにした。
その時に、おばあちゃまの若かった頃のお写真をみせていただいたりして
亡くなったご主人の話なんかをうかがった。素敵な写真だった。


そして今日は、夕食後の時間から今もずっと、
下のおばあちゃまのお宅から、何人かの話し声が聞こえてきている。
玄関を入ると、すぐ居間になる今風な私達のイタリアの住まい。
他のお家の間取りも、それほど大きくは変わらない。
石造りなので、人の話し声もテレビの音も、廊下にまですぐ響き渡ってしまう。
流石に話の中身までは分からないけれど、その口調は結構ダイレクトに伝わってくる。


一昨日のこと。
何かのはずみで鎧戸が勝手に閉まってしまったらしく
おばあちゃまは一人で、庭に締め出されてしまったらしい。
その叫び声に、何件かの人が廊下に出てきた。
残念ながら、今回は玄関に鍵がかかっていて中に入ることはできない。
しかも庭の垣根が高くて、外からも簡単には入れそうにない。
故に連れ出すことも不可能。しかも生憎の雨。寒さも増してくる時間帯。
でも、何とか家族の方に連絡を取ることができて、
お孫さんらしき女の子が扉を開けにやってきた。


最近は、夜に付き添っていたお姉さんが来られなくなったようで
夕方にデイサービスから連れて帰ってもらったら、お一人で過ごされていたようだ。
まだ続いている話し合いは、きっとこれからのおばあちゃまの生活のことだろう。
時折、おばあちゃまの大きな声が聞こえてくる。中々、話し合いは終わりそうもない。
もう深夜12時になる。


おばあちゃまも含め、みんなが納得する方法が見つかる事を祈りたい。


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