2013年7月30日

Le vacanze

バカンス


10日ほど、フェスティバルのお休みがあるので、それを利用してイタリアの南の方を旅行する事にしました。


トッレ・デッラーゴから車で6時間ほどかかって、ラヴェッロまでやってきました。ここでも毎夏、音楽フェスティバルが開催されます。クラッシックのみならず、他ジャンルのコンサートもあります。コンサート以外には、バレエもあるみたいです。


ホテルのお部屋の窓から見える景色です。山と海がすぐ側にあって、ヴィアレッジョの海岸とはその姿が全く違います。一息ついて、ラヴェッロの町を一回り。


ラヴェッロはワーグナーとゆかりの深い町で、ここでオペラ『パルシファル』のクリングゾルの庭の音楽の着想を得たそうです。それに因んで、こういう通りがありました。ワーグナー通りです。


そして、実は私達のホテルの名前が『パルシファル』(笑)


昔、仕事できた事のあるアンドレアが覚えていた場所で夕ご飯。その後、ドゥオーモの前の広場でくつろぎながら、久しぶりに二人でゆっくりの時間を過ごしました。


翌日は、朝からアマルフィ観光。ここは海の町。しかも海と山が近い。

そして町の中は、細い路地が一杯。どこに出るのか分からずに進んで行くので、気分はちょっと探検家です(笑)






そして、偶然見つけて入ったお昼のレストランも良かったです。ボンゴレとズッキーニとペコリーノのパスタを食べましたが、非常に美味しかった。



何がって、パスタが美味しかった。シャラテッリというこの辺りのパスタ。手打ちうどんほどの太さで、かなりこしもありました。早速!お土産に買いました(^_^)


一度ホテルに戻り、ちょっと休憩してから今度は、もう一つの海の町ポジターノへ。ここも山と海が本当に近い。本当に独特の雰囲気です。


夕ご飯もポジターノで済ませ、心地良い疲れと共にホテルに帰ってきました。


今日は、これか近くの海辺でのんびりごろ寝の予定です。


では、また!(^_^)
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2013年7月24日

Tosca

トスカ



オケ付き舞台稽古が始まったトスカ。プリモの歌手達も揃い、稽古場は俄然面白くなってきました。



今回は、トスカ、カヴァラドッシ、スカルピアと三人ともがイタリア人。当たり前の事なんですが、彼らにとってトスカは母国語でのオペラ。稽古を見ているとその事がよく分かります。会話に、独白に、言葉に音符がついていることに改めて気付く。そして、母国語でされているからオペラが面白い。特にプリモの歌手達の稽古は新しい発見だらけです。歌う事、言葉を伝える事、演技する事のどれもが満たされていて素晴らしい。楽譜を見ながら彼らの演奏を聞いていると、どうしてこの言葉にこの音符がついているのか、その理由が突然分かったりします。


上の写真は、昨日の舞台稽古の一枚です。舞台上は、トスカのノルマ・ファンティーニとスカルピアのガブリエーレ・ヴィヴィアーニです。ちなみにカヴァラドッシは、マルコ・ベルティ。
この三人の組み合わせは、今週末のトスカの初日だけなのですが、本当に多くの方に見ていただきたい舞台です。



昨年もここでトスカの公演がありました。プリモの歌手はトスカはロシア人、カヴァラドッシが韓国人、スカルピアはイタリア人でした。それぞれが素晴らしい声の持ち主で、経験も豊富な歌手達です。本当に素晴らしい声。でも外国人の二人は、相手の言葉の扱いに反応している歌ではなく、覚えた言葉でオペラをしているというのが伝わってきました。それぞれが自分のパートをしたいように歌っている、、、そんな印象だけが残りました。沢山の拍手で終わった舞台でしたが、私にとっては非常に残念な舞台でした。デュエットも、テルツェットも彼らが舞台上でしていたドラマは会話ではなかったから。外国人が母国語でないイタリア語でオペラを、しかもそれをイタリアでする場合の難しさを教えてくれた舞台でした。それを乗り越えるためには、沢山の努力が必要であることも改めて認識できた舞台でした。



これは私がこれからしていくべき仕事に関してですが、では私達日本人が、日本で日本人だけで母国語でない言語のオペラをする時は?そんな事も考えながら稽古に参加しているこの数日です。


オケピットから見える三幕の舞台装置。
ローマのサンタンジェロ城の天使像です。きっと私達の公演も見守ってくれることでしょう。


では、また!(^_^)
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2013年7月22日

Camerino volante

空飛ぶ楽屋



舞台用語というものが、イタリアにも存在します。新しい言葉を一つ覚えました。
それがタイトルの『camerino volante』です。リゴレットの一幕には、早替えのシーンがあります。舞台から楽屋に戻って着替える時間がない場合、袖中に着替える場所を作ります。これは日本でも時々みかけます。その場所の名前をイタリア語では『camerino volante』と呼びます。衣装付きの舞台稽古で初めてその言葉を聞きました。



camerino とは楽屋のことなんですが、その言葉の後ろについている volante 。これは、volare (飛ぶ)という動詞の現在分詞になります。動詞が名詞を形容する場合にこの形が使われます。例えば、 空飛ぶ家(casa volante) とか、空飛ぶホウキ(scopa volante)などです。この方法でいくと、camerino volante とは『空飛ぶ楽屋』ですよね。



そっか、、、楽屋が袖中に飛んできたという発想なのか、、、とニッコリ。なんてファンタジーのある言い方なんでしょ!家に帰って、その言葉が辞書にあるのかどうか調べて見ましたが、残念ながら見つかりませんでした。数日後、リゴレットの初日には、バカンスに入ったアンドレアも劇場にやってきました。三幕の嵐のシーンだけが出番の私もそれまでは一緒に鑑賞。一幕でその早替えと舞台転換が行われている最中に、『camerino volante』の事を思い出したので彼に確認しました。



『袖中の早替えの部屋って、camerino volante と言うのよね?』
『そうやで。それで正しいよ』
『volante って、volare (飛ぶ)のことでしょ?可愛いね、この呼び方!』
『volare(飛ぶ)?』
『え?飛んできたって意味じゃないの?』
『がはは、、、お前、楽屋は飛ばんやろ。羽が生えるんか?』
『素敵やんか、ビューンと飛んでくる楽屋。そんな風に想像してたけど、、、』
『それ可愛いけど間違い。volante ってこの場合素早いって意味。飛ぶじゃない』
『そうやったんや!羽のある飛ぶ楽屋、、、いいと思うけどなぁ、、あはは』


考えてみると日本語の『飛ぶ』という言葉も、『飛ぶように時間が過ぎる』の様に飛ぶという動詞を使って『素早い・速い』という意味を含ませたりしますよね。『素早く飛んできた楽屋で着替える』、、、と考えれば、私の発想もあながち間違いではないかと(笑)



今週はトスカの稽古が大詰めです。今日もこれから、昼夜の稽古です。
イッテキマス!


では、また!(^_^)



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2013年7月17日

Rigoletto

リゴレット


3つ目の演目リゴレットの初日が迫って来ました。昨日は、オケ付き舞台稽古2日目。キャスト、助演、そしてダンサーは、完全に衣装や鬘をつけての稽古でした。今日の夜が公開ゲネプロのため、演出家がチェックしておきたかったのでしょうね。


嵐のシーンがある三幕まで私は仕事がないので、昨日は二幕終わりまで客席で稽古を見ていました。下の写真は、一幕の最初のシーンです。まだ明るい時間帯か稽古が始まったので、照明の効果が分からないのが残念ですが。



私が担当している嵐の雷や風の音は、客席に聞こえている音量はちょうど良い感じらしいですが、幕中はすごいことになっているそうです。返しのスピーカーが幕中にも設置されていて、そこから聞こえる音はもう爆音らしいです(笑)なんとなくそんな気はしていたので、稽古前に舞台監督のトニーに挨拶に。


『チャオ!昨日の嵐どうやったかな?』と、私。
『Michiiiiiiiiii! 三幕の嵐のシーンだけは、君のことホンマ!憎むよ。その時は僕、スピーカーのど真ん前にいるんやで!』と、天を仰いでこの上なくたまらん顔で答えるトニー。
『あはは、、、そうじゃないかと思ったわ。今日も弾いてもよろしゅございますか、トニー?それをお伺いしたく、ここに参上いたしました』と、私。
アハハ、、、と声高く笑って、舞台監督が一言。『全て貴女のお望みのままに!』
ほぼ50年、劇場で働いてきているトニー。劇場で生きてきた人です。こういう人達と関われるのも劇場での素敵な経験です。

兎に角、舞台監督の言葉を思い出して、ちょっとだけ控えめに鍵盤を押さえながら、昨日も無事に嵐のシーンを通過(笑)稽古も何とか時間内に終わりました。





今日の公開ゲネプロと、週末の本番が楽しみです。
では、また!(^_^)
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2013年7月13日

La prima

初日



昨日12日は、フェスティバルの初日、『外套』と『カヴァレリア   ルスティカーナ』の公演が行われました。

ホワイエに置かれた大理石の彫刻。数年前に、劇場が新しくなった頃から入口近くに設置されています。この紳士は、プッチーニと思われます。

劇場への外からの入口前には、ご招待などのお客様を迎えるためのアペリティーヴォの場所も用意されています。


私達も普段とは違う緊張と興奮を抱きつつ、それぞれの持ち場で仕事です。昨日は袖中でのキュー出しが仕事でしたから、そこで撮った写真を何枚かご紹介します。


開演直前の舞台。


影コーラスで待機中の男性コーラスと、手前はオルガン弾き役の仕出しのおじさま。


主役のミケーレを演じるアルベルト・カザーレ



『外套』と『カヴァレリア    ルスティカーナ』の間の休憩には、次の演目の衣装に着替えたコーラスの最後の確認稽古。カヴァレリアの舞台、シチリア地方の民族衣装ですね。

約30分の舞台転換で、セットはすっかり入れ替わりました。この転換は、幕のない野外劇場では、お客様も見ることができます。大道具のお兄さん、最後のチェックから袖中に、戻ってくるところですかね

カヴァレリアで有名な、間奏曲の際のシーンです。パスクアでの行列です。十字架を持つ人、キリストの像を担ぐ人達。そのすぐ後ろは、カラビニエーリや市長さん。

その後に、民族衣装の民衆が続きます。コーラスの衣装の色合いが素敵ですよね。

 


無事に終わった初日。
終演後は、スタッフ仲間と近くのバールで乾杯。上手に帰る瞬間を逃した私は、その後、午前3時までお付き合いするはめに(苦笑)


今日は二演目めのトゥーランドット。
またまた楽しみます。



ては、また!(^_^)

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Turandot

トゥーランドット


これは、7月9日に書いたものですが、下書きに残ったままでした。
遅れましたがアップします。

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今日は、一日お休み。
明日も夕方以降が仕事なので、一旦ミラノに戻ります。まだまだ先の様に思える日本への出発ですが、よく考えると意外にミラノに戻れる日がないことが判明。そして、今回はアンドレアも同じ期間に日本で仕事。そんな事を考えると、帰れる時に帰って用事を少しずつ済ませるべきと判断。しか〜し!今日は、乗り物運悪し。待ったり遅れたり、久々にイタリアらしい電車での旅です(笑)なので、その時間を利用してこれを書いてます。



一昨日と昨日は、トゥーランドットのオケ付き舞台稽古でした。指揮者は、ダニエル・オーレン。いつもとは違う緊張が稽古場に漂います。指揮者によって、フェスティバルのオケもコーラスも全く違う団体の様に音が変わります。私も、チェレスタでオケ中です。写真に見える紳士がオーレンです。





時々、悪態もつきながらのオーレンの指揮ですが、音楽を操る手腕は見事です。テンポ緩急やダイナミックスの幅広さがドラマを一層盛り上げます。カラフのマルチェッロ・ジョルダーニも一昨日到着しました。


今週末には、幕を開けるフェスティバル。本番の様子も、またお伝えできたらなと思います。これは、トゥーランドットの装置の一部です。



では、また!(^_^)

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2013年7月5日

Stiva

船倉


昨日は、来週の金曜日に幕を開けるフェスティバルの最初の演目プッチーニの『外套』のオケ付き舞台稽古でした。昨日は衣装、メイク、カツラとほぼ完全な形での稽古になりました。


イタリアの劇場では、ほとんどのキュー出しは、ピアニストの仕事になります。フェスティバルでも、それは私達の仕事として割り振られます。私は、舞台上でのキュー出しは、この『外套』のみ。後の演目は、オーケストラピットでの鍵盤奏者として働きます。


で。
どこで仕事をするかと言うとこちら。
右端に譜面台があるのが分かります?ここで仕事です。



しかし、これは一体どこか。
舞台を正面からみると、一杯飾りでこの様に貨物船が置いてあります。手前の柵が、オーケストラピットと客席のしきり部分。





そして、これが船の甲板。
右にある穴が船倉で、これが最初の写真の階段のあるところです。この穴から、歌手や仕出しの人達が出てくる事になります。





そこを降りたところに私達がスタンバイして、楽譜に打たれたキューに従って合図します。ちょうど二枚目の写真の舞台下で、オーケストラピットの裏側になります。




譜面台の周りには、船員達が運ぶ小道具の荷物が積んであります。ね、ちょっと本当の船倉みたいでしょ(笑)



かなりの広さがあるのですが空気が全く動かず、想像以上に暑いです。下から見ると、甲板ではミケーレ役の アルベルト・ガザーレ(Alberto Gazale)と演助のルーカが舞台の確認中でした。


いままで、稽古ではピアノを弾いていたので、ゲネプロを除いて昨日が唯一のキュー出しを落ち着いて試せる機会でした。
しかし!
結局は、昨日が初のオケ付き舞台稽古。歌手からの要望で、私はキュー出しではなく指揮者の後ろで急遽プロンプをすることに。キュー出しの練習をしたかったんだけど、、、。


ま、こんなもんですな(笑)
なんとかなるんでしょう。きっと!



では、また!(^_^)


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2013年7月2日

Tempesta




一昨日の舞台稽古の時に撮った写真です。(汚い靴も写っていますがお許しを!キュー出しのため、舞台上はやっぱりスニーカーが便利です)これとタイトルの嵐で、何のオペラの稽古かわかる方もいらっしゃいますよね(^_^)

今年はヴェルディの生誕200年、マスカーニの生誕150年なので、フェスティバルでもプッチーニ以外のオペラを取り上ています。


その一つは、ヴェルディのオペラ『リゴレット』。作品の舞台であるマントバの町は昨年大きな地震があり、沢山の歴史的な貴重な建物が破損したり、一部崩壊したりしました。去年、たまたま地震の一ヶ月ほど前に、マントバを訪れました。あの美しい町がと思うと、とても残念です。修復にもまだまだ時間がかかる事と思います。マントバ公爵のお城の横を流れるミンチョウ川は、蓮の花が咲く場所としても有名です。そしてこの川の畔は、リゴレットの第三幕の舞台でもあります。(写真の楽譜に見える MINCIO という言葉が、その川のことです)


そして嵐。
私はこの演目では、嵐の効果音奏者として参加する事になりました。鍵盤楽器を使ってそれらの音を出すため、今日はそのオーケストラ稽古に参加してきました。その写真がこれ。手前に写っているのが、そのパート譜ですがこんな文字があるのがお分かりになりますか?


Cassa interna   舞台上にある大太鼓
Lampi               稲妻
Tuoni                 雷
Pioggia              雨
Campana           鐘(時刻を知らせる教会の鐘の音です)


ヴェルディの時代は、勿論電子楽器などまだ存在しませんでしたので、太鼓や特殊な道具を使って、雨や風、雷等の効果音を出していました。そう言えば歌舞伎がまさしくそうですよね。

今でも、雷の音や風の音のための道具を使って演奏される公演もあります。しかし、如何せんフェスティバルの劇場は野外でしかも広い!舞台上の声を拾うマイクはありませんが、特殊な効果音はどうしてもPAを使ってになります。そこで私達、鍵盤奏者の出番になります。


流石に稲妻は鍵盤では無理ですので、照明で扱われます。しかし、上記の効果音は自分の好き勝手に入れても良いわけではなく、作曲者ヴェルディによって、どこでどれだけの長さその音が必要かが楽譜上に指示されています。

雷、落雷、風雨、教会の鐘の音を音響の方が用意してくださいましたが、鐘はオーケストラの音と馴染まないため却下。音程のないものばかりを扱うことになりました。少し楽器の操作に慣れなければなりませんが非常に楽しいです(笑)


袖幕から見る舞台は、いつもいつも私を喜ばせてくれます。そして、どこの国にいても、劇場の中や舞台の上ではいつも自分が自分でいられます。

(稽古前に、舞台の後ろから客席を写したものです)


明日は、久々にカヴァッレリア  ルスティカーナと外套の稽古です。これからだんだん初日に向けて、みんなの緊張がたかまります。初日は12日。もうすぐです!


では、また!(^_^)



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